2035年、東京の家からガスはなくなるのか

光熱費

一人暮らしをはじめると、ガスはかなり身近になります。シャワー、給湯、コンロ。毎月の請求額は見るけれど、「この先もずっとガスを使い続けるのか」まで考えることはあまりないかもしれません。
ただ、今後10年ほどで、東京の家のエネルギー事情はかなり変わりそうです。

2035年に、ガスが一斉になくなるわけではない

結論から言うと、2035年に東京の家からガスが一斉になくなる、という話ではありません。
東京都が掲げているのは、2035年までに温室効果ガスの排出量を2000年比で60%以上減らすという目標です。
ここで出てくる「GHG」は、Greenhouse Gas、つまり温室効果ガスのこと。CO₂だけでなく、メタンなども含めた総称です。難しく考えず、「地球温暖化につながるガス全体」くらいに捉えておけば十分です。住宅では、断熱、省エネ、太陽光発電、高効率給湯などを進め、そもそも使うエネルギー自体を減らしていく方向です。

家の側では「電化」が少しずつ進む

住宅側で進みそうなのが「電化」です。たとえば、ガスコンロをIHにしたり、給湯をヒートポンプ式にしたりする流れです。東京都も、住宅の省エネ性能を高めたり、高効率な給湯設備を普及させたりする方向を打ち出しています。
つまり、これからの住宅は「ガスを使うか、使わないか」の二択というより、そもそも必要なエネルギーを減らし、そのうえで電気を使う場面を増やす方向に進んでいきそうです。
一人暮らしでも、この変化は無関係ではありません。次に部屋を選ぶとき、家賃や駅距離だけでなく、給湯方式や断熱性能を見る価値は今より大きくなっていきます。

都市ガスは「消える」より「中身が変わる」

では、都市ガスはそのまま消えていくのでしょうか。東京ガスが描いている未来は、少し違います。
ポイントは、ガス管をなくすより、そこを流す燃料の中身を変えることです。
中心になるのが「e-メタン」です。これは、水素とCO₂を反応させてつくる合成メタン。都市ガスの主成分であるメタンと性質が近いため、既存のガス設備や導管を活用しやすいのが特徴です。
東京ガスは2030年までに、都市ガス小売供給量の1%をe-メタンで置き換え、2030年代にはその供給量を10倍以上へ拡大する方針を示しています。
つまり、ガスをなくすのではなく、ガスの“中身”を変える方向です。

「CN化率」や「ネットゼロ」はどういう意味?

この先の記事やニュースでは、「CN化率」や「ネットゼロ」という言葉もよく出てきます。
「CN」はCarbon Neutral、つまりカーボンニュートラルの略です。
東京ガスは2040年に、国内で供給するガスのカーボンニュートラル化率50%を目指しています。ざっくり言えば、供給するガスの半分を、e-メタンなどを使って脱炭素化していくイメージです。
そして2050年には「CO₂ネット・ゼロ」を掲げています。
ネットゼロは、「CO₂をまったく出さない」という意味ではありません。排出量をできるだけ減らしたうえで、吸収や除去なども含めて、全体として実質ゼロにする考え方です。
言葉は難しく見えますが、要するに「排出を減らし、残った分も別の方法で埋め合わせる」ということです。

2035年に見るべきは「ガスがあるか」だけではない

今回の可視化で一番見てほしいのは、2035年を境にして、住宅と都市ガスが別々の方向に変わっていくことです。
家庭では電化・省エネが進む。
一方で、都市ガスは脱炭素化していく。

この2つが同時に進みます。
だから、一人暮らしの生活コストという視点では、「ガスがなくなるかどうか」だけを見るのは少しもったいないです。見るべきなのは、住宅の電化率、高効率給湯器の普及、そして都市ガスの中身がどこまで変わるか。

生活のコスパは「先に仕組みを知る」と上げやすい

エネルギー政策というと、自分の生活から遠い話に見えます。
でも実際には、数年後の部屋選びや光熱費に効いてきます。
たとえば次に引っ越すとき、「家賃が安い」「駅から近い」だけでなく、給湯方式や断熱性能まで見る。そうすれば、毎月の光熱費まで含めた本当のコスパを考えやすくなります。
生活のコスパを上げるために必要なのは、単純に節約することだけではありません。

これから何が高くなり、何が置き換わり、住宅の標準がどう変わるのかを先に知っておくこと。

2035年の東京では、ガスが消えるというより、「家でエネルギーをどう使うか」が今とは少し違う形になっている。今のところは、そう考えるのが一番現実に近そうです。

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